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世界のHIV/AIDSアンケート
Zimbabwe.NET 青年海外協力隊体験記
from アフリカ ジンバブエ
 ■ カリブ海域某国のエイズ対策隊員アンケート回答

| A さん |    |


 1. 回答者の説明 A さん
 1.1 簡単な活動概要(特徴や例として典型的なあなたの1日の活動)

 平成17年3月〜平成19年3月まで、カリブ海地域某国の「国家エイズ対策委員会」に所属し、エイズ予防パンフレットや啓発用チラシなどを作成している。学校やコミュニティ・センターなどの場所で行われる講習会では、進行の補助を務める。私自身が講師を務めることはない。それは、このエイズというものが非常にデリケートな問題を含んでいる場合があるからである。そのため現地の言葉が堪能では無い私は、あくまで進行のサポートに徹している。
 配属先の意欲・能力は共に高く、時には土日や就業時間を終えてからもエイズの予防講習会を一般市民や関係者に対して行うなど、精力的な啓発活動が続けられている。カナダの大学を卒業したベテラン看護師であった所長を始め、医療技術が進んでいるキューバや国外の大学/大学院を卒業した精神保健福祉士、ソーシャルワーカー、母子保健専門家などで構成される8名の少数精鋭の配属先である。


 2. 任国のHIV/AIDSの実情に関する質問 A さん
 2.1 任国の公式なエイズ感染率は現在、何パーセントか?また活動を通してその感染率を
    実感する時はどういう時か?

 赴任した国の公式なエイズ感染率は0.75%(CAREC/Caribbean Epidemiology Centre)である。国内感染者・患者数は300名前後である(人口が約7万人)。カリブ海地域では、エイズに関してのTVのCMが数多く流れることや時折載るエイズ関連の新聞記事から、これが身近な問題であることに気付く。病院は元より、市内の多くの施設にはエイズのポスターが張ってあり、また、多くの住民が「エイズ?知っているよ」と言う。


 2.2 任国の感染経路の内訳はどのようなものか?(異性間交渉、母子感染など)

 データによると、1987-2005年までのAIDS患者の方々の性別は、ホモ・セクシャルの方(13.4%)、バイ・セクシャルの方(39.6%)、ヘテロ・セクシャルの方(40.3%)、母子感染(6%)であった。男女別では7割以上が男性、年齢別では25-44歳までの層が全体の70%を超えている。


 2.3 活動を通して、人々のHIV/AIDSに対するイメージはどのようなものと感じているか?

 TVのコマーシャルや国家エイズ対策委員会の積極的な取り組み、そして諸外国による資金や人材の支援によりHIV/AIDSに対しての住民の認知/理解度は高い。特に医療施設に来院する妊産婦に対しては、ほぼ全員に対して、強制ではないものの無料のエイズ検査とカウンセリング(予防教育)が行われる。しかし今までの経験で感じたことは、看護師や私の同僚にも同性愛または同性愛性行為に露骨に嫌悪感を示すものもいるということであり、これは非常に強いキリスト教の宗教観に基づいたものであろうと思う。

 住民と話すと「エイズ?もちろん知っているさ。」とほとんどの人が答える。しかし、自分がHIV感染者であることを公言した方はいない。私の同僚が「そんな事をしたら指差されて道路を歩けなくなってしまうよ」と語っていた。

 「禁欲」「複数の人と同時にお付き合いしない」「コンドームを使おう」、といういわゆる「ABC教育」が行われており、また、強い同性愛嫌悪からエイズ感染者/患者は「それが出来なかった人々」として、いわれ無き偏見に曝されることとなる。この小さな離島では、HIV感染者の中には薬が無料であるにも関わらず、医師にかからず自分の疾病の進行を放置しているケースが多い。エイズ啓発講習会でも「HIV感染予防」に力が置かれ、差別や偏見の除去に関しては具体的な活動は出来ていない。


 2.4 人々の「コンドーム」に対するイメージや使用状況はどのようなものか?

 どのような田舎に行っても診療所や薬局はもとより、雑貨屋やガソリンスタンドなどでコンドームは簡単に安価に入手出来る。主に避妊を目的としたコンドームの使用法は広く知られている。
 しかし簡単なアクセスとは裏腹に、実際の使用に関してはそれが必ずしも安全な性生活をもたらしているとは言えない。高い失業率、順調ではない経済状況などからジェンダーの格差は思ったよりも大きい。下にあげるデータを見て、活動先の女性に「これじゃあすぐに子どもが出来るね」と尋ねたところ、「分かってはいるけど、未婚の女性にとって男性の経済力は生活に不可欠である」との回答であった。ちなみに、生まれた子どもは女性が育てる社会通念である。

25-49歳/600名に対するアンケート(2004年度)
1年以内に恋人やパートナー以外の方と性交渉を持った 男性:59% 女性:28%
そのうち、2人以上の方と性交渉を持った           男性:19% 女性: 1%
そのうち、一番最近の性交渉にてコンドームを使った   男性:80% 女性:37%
そのうち、全ての性交渉の場にてコンドームを使った   男性:58% 女性:22%


 2.5 任国の人々のHIV/AIDSに対する学校や家庭での教育内容や理解度は、どの程度の
    ものか?また、隊員活動現場先(活動の対象となる人々や活動で出会う人々)ではどの
    程度なのか?

 学校では、HIV/AIDSに関して一貫して「ABC教育」が行われている。小学校や少年サッカークラブの様な年齢層の住民に対しても、成年に対するのと同様に性器の写真スライドなどを用いてエイズや性感染症の予防教育が行われている。もちろん、このような年齢層の者が「ABC」など説かれても理解できているかどうかは不明であるが、平均初交年齢が11歳と低いこの地域においては必要なのかも知れない。成年層に対しては、コミュニティーセンターなどを利用し、基礎知識の習得を目的としたエイズ予防講習会が住民に対して開かれている。ただし、エイズや性感染症に関して講師として適格な人材も多いとは言えず、これが全ての住民に行き渡っているわけではない。

 医療・保健・福祉関係者に関しては「エイズ・カウンセラー養成講習会」が半年に一度行われている他、各種ワークショップなども数多く、関係者の知識は深く技術は高い。このような活動は参加人数などの内容が細かく集計され、カリブ海地域保健機構(PAHO/Pan Caribbean Health Organization)やGlobal Fund against AIDS, Tuberculosis, and Malaria(世界エイズ・結核・マラリア基金)などに送られ、エイズ対策に活かされることとなる。


 2.6 任国の人(特に学生)はHIV感染予防のための知識をどこでどのような形で得るのか?

 小学校から「Health and Family Life Education」という教科により、健全な家族生活について学習していく。また、主に私の配属先である国家エイズ対策委員会が広く行う「エイズ予防講習会」にて性感染症などの知識を含めて知ることとなる。また、高校においては教室での講義だけに留まらず、各学校の代表生徒や教師を集めて大規模な討論会を実行するなどしている。しかし、そこではコンドームについての講義は事実上出来ない。それは日本と同じく性教育については細かく議論中だからである。そのため「Abstain(禁欲)」という言葉に代えて、計画性が無く、無防備な性交渉をしないように学生に働きかけている。「コンドームの使用は、安易な性交渉を助長していくものである」と考える有力者も多い。このため、学生に対して担当者が「コンドーム」という言葉を用いたり、実物を見せて使用法を講義したりすることは社会通念上、許されておらず罰則や処罰の対象となる。実際には避妊具教育を行った教師が現地有力者の権力で左遷や退職においこまれたケースがあると聞いた。


 2.7 任国において、HIV感染者の割合が特に高い集団(ハイリスクグループ)は存在して
    いるのか?もし、そのグループが存在するのであれば、なぜそのグループが感染率が
    高いのか?

 いわゆるハイリスクグループとして、赴任した国ではA:売春婦・夫、B:男性の同性愛行為者、C:服役中の受刑者(つまり囚人)、そしてD:知識が薄い青少年が認識されている。そこには様々な要因が考えられるが主として、Aに関しては不特定多数の人間と性交渉を行う、B・Cについてはコンドームの使用率が低い、Dについては性活動が活発であり、HIV/AIDSやSTDに関して知識が薄いことなどが挙げられる。


 2.8 活動を通して、任国にHIV/AIDSが広がる文化的・宗教的・社会的・その他の背景を
    感じることはあるか?また、実例があったらいくつか挙げて下さい。

 ジェンダー(性差)
  • 結婚していない成人女性が比較的多い。女性は男性からの求婚を待つことが社会通念上、善しとされる。逆に、女性が男性に対して積極的にアプローチすることは好ましくないと考えられている。近年は女性の社会進出も盛んであるが、依然として男性優位は続いている。それ故、男性が婚姻の選択権を持つことが多く、ゆえに性交時のコンドーム使用を独善的に決定したり、同時期に複数のガールフレンドを抱えることも多い。
 カーニバルやフェスティバルなど
  • これら大規模な祭りの時には住民はお酒も入り、大人も子ども達も夜が更けるまで踊り続ける。キリスト教に従い、普段は質素な生活振りであるが、仮面を被ったこの期間は心行くまで酒を飲み、踊り楽しむのが伝統である。いうまでもなく、この期間はHIVやSTDに感染する可能性が一気に高まる期間である。
 性教育
  • 学生に対して直接的な性教育を行うことには反対する市民も多い。しかし、低年齢から性交渉を行われていることは、周知の事実である。同じような状況の日本と比べてエイズがメディアで取り上げられることが比較的多く、国策として政府が住民と会話を持つ(配属先である国家エイズ対策委員会)など積極的にエイズ啓発活動を行っている事に関して言えば、赴任した国の方が先進国と言って良い。

 2.9 アメリカでは恋人関係になり性交渉を持つ前に、HIVやSTDのテストをお互い受けに
    行ったりすると聞いたが、任国でもそのような風潮はあるのか?

 ”エイズ検査促進デー”を行ったことがある。1日だけで300名近くのクライエントが来所したが、カップルで来所したものは見なかった。また、「カップルでエイズ検査を受けましょう」などという話は赴任した国では聞いたことが無い。


 2.10 任国ででHIVの抗体テストを受けたいと思ったとき、どこに行ったら良いのか?
    費用はいくら掛るのか?結果が分かるまでの検査プロセスは?プライバシーは守られ
    るのか?

 各地域にある公営診療所、国内に2箇所ある総合病院に行けば検査は無料で受けられる。開業医に個人的に相談するとかなりの金額がかかる。小さな離島だけに知り合いも多く、検査に行きたくてもエイズ検査に行ったことを周囲に知れるのを避けるため、検査に行き辛い状況である。明るく陽気な国民性から、全ての医療関係者が秘密を守れる人物であるとは考えられていない。現時点(2007年11月)では即日検査は行われておらず、これの導入について検討中である。

 検査のサンプルは国内には適切な臨床検査施設が無いために近隣の国(トリニダード&トバゴ)へと送られる。検査結果が赴任した国に戻るのは原則的に2週間前後である。ただし、かなり期間(数ヶ月単位で)が前後することがある。ゆえに日本のように、「○○日後に検査結果を受け取りに来て下さい」とは安易に言えない状況である。そのため、検査結果を通知するためにクライエントと携帯電話などで連絡を取って来所してもらい、カウンセリングと共に結果を本人に通知している。以上、エイズ検査を受ける際には匿名であるが、連絡先をクライエントは告げることが望ましいとの実情である(強制ではない)。連絡が取れないものに対しては、十分な期間をおいてから結果を取りに来るように指示されている。

参照:2004年度に行われた調査
プライバシーが確保されたHIVテストが受けられると思う 男性:76% 女性:73%
HIVテストを受けたことがある                  男性:25% 女性:58%
自発的にHIVテストを受けたことがある            男性:45% 女性:20%


 2.11 任国の現状を踏まえて、ある人のHIV感染が判明したときにその後の生活はどのよう
     に変化するのか?栄養面や生活習慣面での注意や検診、服薬、周囲への告白、周囲
     との接し方など

 国家エイズ対策委員会はもとより、各医療関係者やNGOを招いての栄養や生活習慣、薬の服薬方法など、多くのワークショップなどが開かれている。赴任した国にはHIV感染者/患者のサポートのためのNGOが2つあり資金調達などに課題はあるものの、しっかりとした活動をしている。当然、感染が確認された方にはカウンセリングが行われるが、その後の生活は人それぞれであろう。親類縁者のサポートを受けて、高校に通うエイズ孤児もいる傍ら、教会や各慈善団体の支援を受けながら生活するものも居る。

 国民健康保険が未だに確立されていないこの国では、市民はアメリカなどの保険会社に個人で加入している。失業率が高く、学歴が重要視されるこの国では満足な職を得るのは困難であり、HIV感染者の中にはしっかりとした生活環境に恵まれないものも多い。


 3. 任国のHIV/AIDS対策に関する質問 A さん
 3.1 活動を通じ、任国のHIV/AIDS対策(対策で用いられる社会的・文化的・宗教的など
    の手法)の特徴を実感してみて、非常に有効だと思ったことは何か?
    (日本との違いも含めて)
    E.g. ジンバブエではスーパーにコンドームが1ドルで置いてある。禁欲教育など

 国家を超えた、カリブ地域全体でのエイズ啓発への取り組み。OECS(東カリブ諸国機構)やCAREC(カリブ海地域感染症センター)、PAHO(WHOのカリブ地域機構)を中心に各国のエイズ対策委員会や当事者団体、NGOが一体となって取り組んでいる。日本もアメリカを含めた先進各国をはじめ、各地域と関係を強化してアジア全体となって進んでいくべきであろう。国内の資源に頼ったエイズ対策は既に限界に達していると思う。

 市民との直接的な対話、エイズ予防講習会、国家全体での取り組み。メディアの大規模な活用。
※カリブ海地域の英語圏ではアメリカの番組を放送している場合が多い。そこではコンドームやエイズに関する多くのCMが映画スターやスポーツ選手などの出演にて放送されている。また、国内においてはワークショップや会議をはじめとする多くのイベントに関して、病院関係者のみならず青少年育成課や男女共同参画局など政府の枠組み全体での取り組みが見られる。


 3.2 任国のHIV感染予防対策について、さらに(現在よりも)必要なことはどんなことだと
    思うか?

  • エイズ啓発に関わる人材の確保(特に男性のピア・エデュケイター)
  • 社会人男性に対するアプローチ
  • 迅速で確実、そしてプライバシーが完全に確保された検査/カウンセリング

 3.3 任国のHIV感染者やAIDS患者に対するケアについて、さらに(現在よりも)必要 なこと
   はどんなことだと思うか?

 特に子ども達、青少年に対しての道徳教育。子ども達が変われば、大人も変わると思う。赴任した国では医療は最先端ではないが、それでも医療先進国であるキューバ、そしてナイジェリアからの医療関係者がサポートとして多く常駐している。最新のARV薬が無料で入手できる。しかし、多くのHIV感染者は差別と偏見から苦しんでいるし、ゆえに病院に行けない方もおられるのが現状である。障害や特定の疾病、人種に対する差別・偏見は少なくなく、エイズだけに限らず「ノーマライゼーションの浸透」が待たれる。そのためには「すべてはキリストが救ってくれる、守ってくれる、許してくれる」という特定宗教への強い依存からの脱却が必要かも知れない。


 3.4 活動の中で人々にHIVテストを受けるようにと人々を促すとしたら、あなたはどのよう
    に啓発するのか?

 非常に難しい問題である。なぜなら、人はニーズの無いことはやりたがらないものだからである。

 HIV/AIDSは他人事ではなく自分のパートナーや子ども達にも関係するとても重要なことであること、そして自分自身や友人たちの多くに感染の可能性があること、感染しても日常生活に不安はないことを訴えながら、地道に住民と話している。言葉が自由ではないために深い話は出来ないが、「エイズ啓発のためにわざわざ日本から来た。それはエイズが、「赴任した国ばかりでなく日本でも世界でも非常に大きな問題だから。」と言うだけでも、彼らが受けるインパクトは大きいと思う。逆に日本がアフリカやカリブ地域、オセアニアなどのエイズ啓発者の力を借りることは何ら恥ずかしいことでなく、素晴らしいことだと思う。


 4. エイズ対策隊員に対する質問(実例やエピソードを交えて回答して下さい) A さん
 4.1 任国において、活動を通した「やりがい」は何か?また、どんなときに「やりがい」を
    感じるのか?

 外国人としての自分だからこそ出来ることがある。
  • 英語/中国語/スペイン語/ハイチ語でのエイズ啓発パンフレットを作成したところ、「これはあなただからこそ思いついたこと」と高評価であった。
  • スペイン語系住民に簡単なチラシを作り、HIVテストの紹介を行った。
 日本でもそうであるように、外国人はそこ言葉の壁からエイズ対策から疎外されがちである。外国人だからこそ気付き、実行出来ることには海外ボランティアとして嬉しく思う。


 4.2 任国の人々に対するHIV感染の予防啓発において、あなたはどのような「工夫」を
    持って行っているのか?

 出来るだけ同じ目線で地域の方々と話すことを心がけている。「外国人」という自分の存在を隠すことは出来ないが、だからといって「スペシャリストでは無い」ことも隠さない(自分から言う必要はないが)。

 性風俗店やバーなどに勤める外国人女性に対しては、ビールを飲み交わしながらエイズについて話し、普段着の会話を心掛けた。賛否両論あるであろうが、配属先である「現地の公務員」には入りきれない領域をボランティアとしてやっている。結果として風俗店に勤める彼女達の数人が配属先までエイズ検査を受けに来てくれたのは嬉しかった。


 4.3 日本よりも予防啓発が盛んな任国で、C/P(活動を共にする同僚)の方がHIV/AIDSに
    関する知識や経験が豊富な場合、あなた(エイズ対策隊員)は自分のどういったところを
    強みと感じ活動しているか?また、どのように貢献していると考えているのか?

 私は自分のアイデンティティーを確かにした。それは1、日本人であること 2、成人男性であることなどである。

 1に関しては、
  • JICAの豊富な資金力を活かせる立場にあること(必要と感じた情報機器の導入など)
  • 人種や宗教に対して偏見が少ないこと(外国人に対するエイズ対策)
 2に関しては、
  • 成人の男性としての視点を持っていること(子ども達や女性に目が向けられがちなエイズ対策に成人男性としての視点を展開できる)
  • ゲイや男性のバイ・セクシャルの方々に対して偏見を持たずアプローチ出来る(オープンに話しが出来る)

 4.4 任国において、外国人である協力隊員がエイズ対策活動(啓発やケアなど)を行う時に、
    住民である受け手に対する利点や不利点は何か?
    E.g. 外国人だからかえって相手に対する説得力がある。

 利点
  • その存在だけで市民に対してインパクトを与えられる。例えば赴任した際には「日本人ボランティアがエイズ事務所に来た!」と新聞に大きく扱われ、TVでもインタビューが放映された。「いま、この国でHIV感染が広まっている」というインパクトはあったであろう。エイズ予防の講習会でも「わざわざ日本から」と、市民に対しては「世界におけるエイズ」を感じてもらえるのではないだろうか。
 不利点
  • その土地の言葉や文化を理解するのには長い時間がかかる。よって、住民との直接の対話においては信頼を得られないときもある。

 4.5 あなた(エイズ対策隊員)が初めてHIV感染者と接した時に、何らかの抵抗感(もしあると
    したら)はあったか?また、以後それらはどのように変化し現在に至っているのか?

 ある講演会で初めてHIVをお持ちの方とお会いしたとき、彼は「いつか南アフリカに行き、同じ疾病を持つ方々と親交を深め合いたい」と語られていた。私が「死が近いことに関し、不安に思ったことはないか?」とお尋ねした時。喫煙者である私に対して「あなたは肺ガンで自分の死が近いことを不安に思ったことはないか?あなたが私より先に行ってしまうかも知れませんね」と笑われてしまった。当時、わたしは「エイズ=死」というイメージを持っていた。

 しかし今、エイズについて考え、いろいろな人と出会い「気の置けぬ友人」も出来た。ちから強く、前向きに笑って生きる彼らに、ずっと側にいて欲しいと思う。尊敬している。


 4.6 現在の日本における、HIV/AIDS対策として必要と思われることは何か?またその
    理由は?

 援助交際や売買春など、違法な性的行為の法整備の早急な強化。医療・教育・社会福祉を中心とした対策会議の開催、そして各教育機関での取り組み。
  • 青少年の感染者の急増に対して
 欧米や近隣諸国と協働した国家規模でのエイズへの取り組み
  • エイズ対策が出遅れた日本。諸国の技術支援を受けることは必須であろう。なぜなら、国内には有能な人材が少なすぎるからである。ゆえに、国内で活躍できる人材の育成は急務である。
 成人男性へのエイズ啓発
  • 職場などを通じたエイズ啓発
 各地域での「エイズ対策事務所」の設置
  • 都道府県の上のレベルでの取り組みが期待されると思う。例えばJRや電力・電話会社などのように広域で大規模な取り組みが必要と思われる。もしくは保健所の一部門としてではなく独立したものとして、各地方公共団体レベルでのより強い取り組みが必要と感じている。

 4.7 日本はHIV感染者数が増加傾向にあるが、自分の活動を通して得たことから日本人に
    伝えたいことは何か?

 2年前、私が保健所で受けた初めてのエイズ検査を思い出します。とにかく怖かった。結果を聞くときに、手も震えました。私にも感染の可能性があるような経験があったからです。「もしエイズに感染していたら両親や親類、知人になんて言おう・・・」そればかり考えました。

 日本では、誰がエイズについて教えてくれるのでしょうか?
 学校の先生? 家族? 友人? それとも職場の上司ですか?
 私には誰も教えてくれなかった。多くの人はそうじゃないですか?

 この国に来てみて感じたことは、本当に多くの人がエイズについて知っているということ。また、近くの国々をはじめ本当に多くの人たちがエイズについて行動しているということ。国内では海外から巨額の資金や有能な人材の支援を得て、省庁レベルで効果的なエイズ啓発活動が行われていること。カリブ海地域全体での取り組みではHIVに感染した方々に対し、薬を提供したり、彼らに対し差別や偏見を持たぬよう訴えたり精力的な活動が行われているということ。

 しかし、それなのに、この国が佐渡島ほどの小さな離島であるにも関わらず、毎年HIVに感染する人たちの数はまったく減らないという事実。そして多くのHIV感染者は周囲に知られぬよう、医師の処方にもかかれないという真実。

 この国で中学生や高校生でも知っていることを、日本人は知らない。日本が心配です。


2007.11.18





 

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